理法魚(りほぎょ)男子の役立つブログ🌟

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あなたでも発明はできる。発明と特許をちょー簡単に説明します(5):「特許請求の範囲と新規性を理解しよう」

漁村生まれの理系法律系男子、すなわち、理法漁(りほぎょ)男子です。現在は、化学と知的財産権法(主に特許法)を専門とするグローバルな仕事をしています。

 

さて、「あなたでも発明はできる。発明と特許をちょー簡単に説明します」シリーズの第4回では、「発明の本質を捉えて、特許の権利範囲を考えよう」という小題で話をしました。具体的には、世の中に、円柱状の鉛筆(断面が丸い鉛筆)しかないと仮定した場合に生み出した鉛筆の発明について、どのように発明の範囲(権利の範囲)を規定すべきかを解説しました。

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 今回は、「特許請求の範囲と新規性を理解しよう」という小題で、理法漁男子と、友達のまみとの会話形式で解説します。

第4回で、特許請求の範囲(請求する発明の範囲)を「転がり防止手段を備えた筆記具」にしたら良いことを教えてくれたけど、実際にどうやって、特許請求の範囲を記載するの??

オッケー!その前におさらいしよう!第3回で、世の中に断面が円形である鉛筆しかなかった場合に、断面が円形の鉛筆は転がりやすいことと、収納時に隙間ができるという課題をみつけて、その課題を解決するために、断面が正三角形、正方形、又は正六角形である鉛筆をまみが発明したんだよな。

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 でも、第4回で、特許請求の範囲(請求する権利範囲)に、断面が正三角形、正方形、又は正六角形である鉛筆と規定して特許を取得しても、もったいないことを解説したよな。断面が正三角形、正方形、又は正六角形である鉛筆と規定してしまうと、例えば僕が、断面が五角形の鉛筆を製造販売しても、まみの権利範囲に入らないから、まみは何もできないからね。

うん。それについては理解したよ。そもそも、特許にするには課題は一つでいいんだよね。断面が円形の鉛筆の主な問題点は、転がりやすいことだから、課題は転がりやすいことを防止すること。その課題を解決できることを頭に入れて、発明を上位概念で表現しつつ、発明の範囲を広げていくんだよね。

その通り。きちんと第4回の説明を理解してるな。おさらいすると、断面が正三角形、正方形、又は正六角形である鉛筆の上位概念を考えると、断面が多角形の鉛筆になる。そうすると、五角形であろうが、九角形であろうが、権利範囲に入るし、転がりやすいことを防止するという課題も解決できる。

うんわかってる。さらに断面が多角形と表現すると、ほとんど丸いけど、角があるような下の図形は権利範囲に入らないから、断面に少なくとも1つの角を含む鉛筆と規定すれば、断面が多角形である鉛筆に加えて、下のような断面をもつ鉛筆も権利範囲に包含されるんだよね。しかも、この規定であると、角をもつことが必須条件だから、転がりやすいことを防止するという課題も解決できる。何度聞いてもすごーいって思うわ。発明って新しい思想(考え)なんだね。

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そういうこと。また、第4回で説明したように、断面が少なくとも1つの角を含む鉛筆と規定すると、楕円形や、大きい円と小さい円とを組み合わせた下のような断面をもつ鉛筆も入らないし、鉛筆に限定しているからシャーペンも入らなくなる。だから、僕だったら「転がり防止手段を備えた筆記具」と規定するんだ。

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第4回でなるほどって思ったわ。じゃあ、特許請求の範囲にどうやって規定するか、そろそろ教えて。

オッケー。特許請求の範囲(請求する権利範囲)は、請求項1、請求項2、請求項3、・・・というように、請求項という枠があって、そこに発明を記載していくんだ。同じ範疇の発明であれば、いくつ発明を記載してもよくなっている。基本的に、請求項1に最も広い範囲(上位概念)を記載して、請求項2から、請求項1の要件を特定した下位概念を記載していくんだよ。

なんとなくわかったわ。じゃあ、請求項1に「転がり防止手段を備えた筆記具」と記載すればいいんだね。

その通り。請求項2からは、第4回でまみと話し合った下位概念の鉛筆を記載していけばいい。例えば、請求項2には、「断面に少なくとも1つの角を含む、請求項1に記載の筆記具」と記載し、請求項3には、「断面が多角形である、請求項1又は2に記載の筆記具」と記載し、請求項4には、「断面が三角形、四角形、又は六角形である、請求項1~3のいずれかに記載の筆記具」と記載し、請求項5には、「断面が正三角形、正方形、又は正六角形である、請求項1~4のいずれかに記載の筆記具」と記載し、請求項6には、「鉛筆である、請求項1~5の筆記具」と記載するんだ。

第4回で話し合った内容を、特許請求の範囲に反映させたのね。請求項1に記載した転がり防止手段というのを、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5にいくにつれて、さらに限定していくってことね。それで、請求項6では、請求項1に記載の筆記具を鉛筆に限定したのね。よくわかったわ。でも、何でそんなことするの??

特許出願した後に特許庁に審査の請求をしたら、審査官が特許請求の範囲をみて、特許要件に基づいて審査するんだ。鉛筆の例からわかるように、請求項1はかなり広い範囲で記載するだろ??だから、特許要件を満たさない場合が多く、審査官から特許にできませんという通知がくるんだよ。その通知を拒絶理由通知というんだけど、それに応答する期間に、特許請求の範囲を補正できるんだ。例えば、請求項1の「転がり防止手段を備えた筆記具」で特許にできませんと指摘されたら、請求項1をさらに限定した請求項2の要件に補正できるんだ。そしたら、請求項2に記載した発明で特許を取得できるのさ。

なるほどね。でも、そもそも特許要件って何なの??もしかして、理法漁男子が第2回でいってたことかな。発明は、新たに生み出した思想(考え)のことで、その思想(考え)が今までになくて、その分野の技術者が容易に思いつかなければ、特許にできるって言ってたじゃない?

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それに関連することなんだ。例えば、その発明が今までにないという特許要件が新規性という要件なんだ。拒絶理由通知で、審査官から「転がり防止手段を備えたシャーペンが存在するから、請求項1に記載の発明は、新規性がないと指摘されたりすんだよ。その時に、例えば、請求項6の要件を請求項1に組み込んで、「転がり防止手段を備えた鉛筆とすれば、今までにないものだから、新規性の要件をクリアできるってわけ。

よーくわかったわ。じゃあ、次回は特許要件について詳しく教えてよ。

了解。